確実に打者を抑えるファーストストライクの重要性

ファーストストライク

打者を抑えるためにはどうすればよいか?キャッチャーならば常に考えてしまうことですね。ウィニングショットをどこにもってくるか。苦手そうなコースはどこか。どんな気持ちで打席に入ってきているのか。どれも大切なことですが、今回はファーストストライク(初球のストライク)の重要性についてお話しましょう。参考にしたのは『フルタの方程式』です。

参考資料

『フルタの方程式』 古田敦也 朝日新聞出版

早稲田大学野球部の試合分析~先頭バッター出塁率と初球のカウントに着目して~

本著ではキャッチャーがマスターすべき技術が細かく紹介されていますが、その中でも配球論に力が入っています。特にファーストストライクの重要性を丁寧に紹介しています。

どうファーストストライクをとりにいくか?打者に見逃しさせるのか?それとも空振りさせるのか?はたまたファールを打たせるのか?もし見逃しさせるならばどうすればよいのか?打者の裏をかくのか、厳しいコースを攻めるのか、とケースバイケースで説明されているのでキャッチャーとしてはナルホド、ナルホドと読めてしまいます。

その中でも、カウント別に見る打率、ホームラン率のデータが大変興味深いものでしたので紹介します。




カウント別に見る打率

0ストライク0ボール→3割3分9厘

1ストライク0ボール→3割2分0厘

『フルタの方程式』セ・パ両リーグ平均2004~2008年

この2%の差を私たちは戦っているのですね。実際にはパーセンテージ以上の有利不利を感じているのではないでしょうか。本データは0ストライク0ボールから2ストライク3ボールまで12通り紹介されているので、もう少し深く見てみましょう。

実は追い込まれるまで打ちにいかない

ではいつ打ちにいくのか?0ストライクanyボール(123ボール)と1ストライクanyになってから打ちにいくのは全体の49.5%(336375打数中166735打数)、2ストライクanyからは残りの50.5%です。データ上、2ストライクにすると打ち取れる、もしくは2ストライクになると打てないということが明らかなのに、50対50になるというのは面白いことです。

考えられるのは、打者にとっては2ストライクになる間に走者を動かせることがあります。0ストライク1塁と2ストライク2塁ではどちらが得点になりやすいのか?考えてみると面白いです。また、2ストライクになるまで、ボールがいくつあるかも大切です。もしかしたらフォアボールを取れるかもしれません。細かいことですが、自ピッチャーの休憩なんかも無視できないかもしれません。

2ストライクになると強振できない

データ上、安打の確率も低くなるのですが、それにも増してホームランの率が低くなります。これは打者が三振しまいと強振を捨てて当てにいくバッティングに切り替えたことの現れではないでしょうか。

これが意外に重要なことで、キャッチャーとしてはなんとか2ストライクまでもっていってウィニングショットで三振を取るというのが理想と考えるものですが、強振を捨てさせることをもっと重視するならば、ウィニングショットでカウントを取りにいっても損しないということになります。ここも古田さんが本に記していることでもあります。

0ストライク3ボールは強振してくる

この場面から打ちにいった打者は全体の0.18%しかいません(336375打数中622打数)。ただ打率で見ると4割1分3厘、その内ホームラン率は0割9分5厘と他カウントを圧倒する結果となっています。大げさに言えば0ストライク3ボールになると半分は打たれ、その内10回に1回はホームランという恐ろしい結果が待っていることになります。

0ストライク3ボールから打ちにいくのは、よっぽど打撃に自信のある打者であること。そして、狙い球だけを強振していくので打率とホームラン率がとんでもないことになっていると想像できます。

2ストライクの重要性

データ上、確かに0ストライクよりかは1ストライクの方が打率が下がるのが明らかなのですが、2ストライク時の下がり方と比べると少ないように思われます。面白いデータがあったので引用します。

初球ストライク時の打率 0.246±0.026 と、初球ボール時の打率 0.242±0.030 は、有意差があるとは言えない。

初球ボール時の四死球率 0.187±0.014 は、初球ストライク時の四死球率 0.047±0.007 より明らかに大きい。

早稲田大学野球部の試合分析~先頭バッター出塁率と初球のカウントに着目して~

つまりはファーストストライクは打率にはさほど影響しないものの、四球には大きく影響するというものです。結果、ランナーをためやすくなるので、得点される確率も高くなってしまいます。

ファーストストライクは2ストライクへの大切な一歩として、なによりボールを投げて自滅しないために重要なことであるのがわかります。

ウェストボール(遊び球)について考える

個人的には本データからウェストボールについて考える機会になりました。2ストライクを取った後、なにげなく要求してしまう遊び球ですが、もっと考えないといけません。データ上、ボールが多いほどピッチャーが不利になるのは明らかです。だとしたら、不用意にウェストボールを要求するのは大変よくないことです。

ウェストボールを要求するときは、確実にバッターは打てないが、三振を取れる可能性があるボール。例えばボールくさいところからボールになる変化球を要求する必要があります。リスク少なく、ワンボールと引き換えに三振凡打を取れる可能性のあるボールを要求しなければなりません。ゆめゆめ、打者の気をそらすため、チームの息継ぎのためなどと勘違いはなはだしいことをしてはいけません。反省します。

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