前回の続き
『突(トツ)』はただ避ければいいものではない。
まず、できるだけ間近まで引きつけないといけない。
そうしないと、次の動きが読まれ、二発目の『突』の餌食になってしまう。
そして、動きは最小限に。
そうしないと、スピードが落ちて、これまた二発目の『突』餌食になってしまう。
避ける選択肢は二つ。
右か左か、だ。
99「!!!」
ランナー背番号99はタイミングを見計らい、右に避けた。
瞬間、強烈な圧力が頬をかすめる。
鼓膜がビリリと震える。
耳鳴りか、はたまた観客の声か、聞こえるのはただ騒がしい何かの音。
タッチ反応は出ていない。
『突』は、三連発する時間的余裕のあるとき、一発目でしとめることは少ない。
ジャブ、ジャブ、ストレート。
三発フルに使って確実にしとめてくる。
この一発目の『突』は、いわば様子見といったところだろうか。
キャッチャー「ほいさぁぁぁあ!!!」
キャッチャーは二発目の『突』を放った。
右へ避けたら、次はセオリーとしては左に避ける。
右、右と逃げるとホームが遠くなり、また、スピードも落ちやすいからだ。
二発目の『突』は左に戻ることを見越し、そして、戻ってきたのを確実にしとめるための布石だった。