走塁専門職アンタッチャブルその12

前回の続き

『突』を使えないだろうか?

つまるところ、『突』は物理的な力。

手でタッチされるのと同じ力だ。

この力を足場にして、空中で一歩でも走ることができれば…

ここまでは考えたのだが、そもそも『突』を足で放てるのかと心によぎる。

99も一応は『突』を放つことができた。

彼の場合は、5センチほど。実用には程遠かった。

しかし、5センチの『突』でも足で放つことができれば、話は違う。

彼は精神を集中した。

今にもキャッチャーから放たれようとする『突』そのコンマ秒を惜しむように、最大限まで時間をかける。

チャンスは一回だ。

キャッチャー「すまん、ね。……『突』!!!」

容赦なく襲う、非情の『突』。

観客の誰もが、99の最後を確信した。

そのとき。

99「『突』!!!」

右足に気力を集中する。

ほんの少しでいい。

足場を…

願うように放った足の『突』は、つま先分の足場をつくった。

99「ぬおぉぉお!!!」

空中を蹴る99。

瞬間、はじけるように飛び出す身体。

空中で、完全な死に体からの高速移動。

キャッチャーの『突』と交差する…

走塁専門職アンタッチャブルその13







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