前回の続き
『突』を使えないだろうか?
つまるところ、『突』は物理的な力。
手でタッチされるのと同じ力だ。
この力を足場にして、空中で一歩でも走ることができれば…
ここまでは考えたのだが、そもそも『突』を足で放てるのかと心によぎる。
99も一応は『突』を放つことができた。
彼の場合は、5センチほど。実用には程遠かった。
しかし、5センチの『突』でも足で放つことができれば、話は違う。
彼は精神を集中した。
今にもキャッチャーから放たれようとする『突』そのコンマ秒を惜しむように、最大限まで時間をかける。
チャンスは一回だ。
キャッチャー「すまん、ね。……『突』!!!」
容赦なく襲う、非情の『突』。
観客の誰もが、99の最後を確信した。
そのとき。
99「『突』!!!」
右足に気力を集中する。
ほんの少しでいい。
足場を…
願うように放った足の『突』は、つま先分の足場をつくった。
99「ぬおぉぉお!!!」
空中を蹴る99。
瞬間、はじけるように飛び出す身体。
空中で、完全な死に体からの高速移動。
キャッチャーの『突』と交差する…