前回の続き
キャッチャー「ほいさぁぁぁあ!!!」
二発目の『突』が99を襲う。
99「っ!!!」
ここで99は予想外の行動をした。
セオリー通り、左に避けて軌道を立て直すところを、もう一度右に避けたのだ。
キャッチャー「こしゃくなヤツめ…」
予想外の展開ではあったが、キャッチャーは余裕であった。
タッチを避けるだけならば、ホームから離れるような軌道を走ればよい。
だが、それでは、ホームに生還することは難しくなる。
タッチを避けることと、ホームに生還することは同じようで違うのだ。
キャッチャーには選択肢があった。
「このままもう一度左に避けさせ、コースアウトさせる」
「右に軌道を戻させ、接近戦を挑む」
「三発目の『突』に集中して、仕留める」
百戦錬磨のキャッチャーだけあって、頭脳は冷静だった。
99に予想外の展開を挑まれた以上、本来の選択であった「三発目で仕留める」のは止めた。
「このままコースアウトさせる」のが最適だろうと考えたが、キャッチャーにはある予感があった。
「もう一度、予想外の展開をされたとき、自分は対処できるのか?」
コンマ数秒にも満たない時間で思考を巡らせる。
各場面におけるシミュレーションを脳内で行い、一番確実にアウトを取れる選択肢を見つけ出す。
今、一番怖いのは、予想外の展開に巻き込まれ自分のペースを乱すことだった。
自分が常に主導権を握っている状態に戻すこと。
そのためにも、三発目の『突』で、アウトを取りにいくより、主導権を戻すために使ったほうが良い、と考えた。
キャッチャーは「接近戦」を選択した。
キャッチャー「はぁぁっっっ!!!」
ちょうど99の右足が接地する瞬間を狙い、膝元に三発目の『突』を放った。