走塁専門職アンタッチャブルその7

前回の続き

キャッチャー「ほいさぁぁぁあ!!!」

二発目の『突』が99を襲う。

99「っ!!!」

ここで99は予想外の行動をした。

セオリー通り、左に避けて軌道を立て直すところを、もう一度右に避けたのだ。

キャッチャー「こしゃくなヤツめ…」

予想外の展開ではあったが、キャッチャーは余裕であった。

タッチを避けるだけならば、ホームから離れるような軌道を走ればよい。

だが、それでは、ホームに生還することは難しくなる。

タッチを避けることと、ホームに生還することは同じようで違うのだ。

キャッチャーには選択肢があった。

「このままもう一度左に避けさせ、コースアウトさせる」

「右に軌道を戻させ、接近戦を挑む」

「三発目の『突』に集中して、仕留める」

百戦錬磨のキャッチャーだけあって、頭脳は冷静だった。

99に予想外の展開を挑まれた以上、本来の選択であった「三発目で仕留める」のは止めた。

「このままコースアウトさせる」のが最適だろうと考えたが、キャッチャーにはある予感があった。

「もう一度、予想外の展開をされたとき、自分は対処できるのか?」

コンマ数秒にも満たない時間で思考を巡らせる。

各場面におけるシミュレーションを脳内で行い、一番確実にアウトを取れる選択肢を見つけ出す。

今、一番怖いのは、予想外の展開に巻き込まれ自分のペースを乱すことだった。

自分が常に主導権を握っている状態に戻すこと。

そのためにも、三発目の『突』で、アウトを取りにいくより、主導権を戻すために使ったほうが良い、と考えた。

キャッチャーは「接近戦」を選択した。

キャッチャー「はぁぁっっっ!!!」

ちょうど99の右足が接地する瞬間を狙い、膝元に三発目の『突』を放った。

走塁専門職アンタッチャブルその8







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