走塁専門職アンタッチャブルその6

前回の続き

『突(トツ)』はただ避ければいいものではない。

まず、できるだけ間近まで引きつけないといけない。

そうしないと、次の動きが読まれ、二発目の『突』の餌食になってしまう。

そして、動きは最小限に。

そうしないと、スピードが落ちて、これまた二発目の『突』餌食になってしまう。

避ける選択肢は二つ。

右か左か、だ。

99「!!!」

ランナー背番号99はタイミングを見計らい、右に避けた。

瞬間、強烈な圧力が頬をかすめる。

鼓膜がビリリと震える。

耳鳴りか、はたまた観客の声か、聞こえるのはただ騒がしい何かの音。

タッチ反応は出ていない。

『突』は、三連発する時間的余裕のあるとき、一発目でしとめることは少ない。

ジャブ、ジャブ、ストレート。

三発フルに使って確実にしとめてくる。

この一発目の『突』は、いわば様子見といったところだろうか。

キャッチャー「ほいさぁぁぁあ!!!」

キャッチャーは二発目の『突』を放った。

右へ避けたら、次はセオリーとしては左に避ける。

右、右と逃げるとホームが遠くなり、また、スピードも落ちやすいからだ。

二発目の『突』は左に戻ることを見越し、そして、戻ってきたのを確実にしとめるための布石だった。

走塁専門職アンタッチャブルその7







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